木と暮らしの制作所

【英国研修記】ロンドンで飛騨の森を歩く

【英国研修記】ロンドンで飛騨の森を歩く

【英国研修記】ロンドンで飛騨の森を歩く

9月から始まった展示会もあと僅かになりました。
展示会の様子を少しご紹介したいと思います。

The Carpenters’ Line

EXHIBITION
The Carpenters’ Line
Woodworking Heritage in Hida Takayama
飛騨の匠、伝統は未来を拓く

2022年9月29日 – 2023年1月29日

“ The Carpenters' Line: Woodworking Heritage in Hida Takayama explores Hida's legacy of skill and innovation, focusing on woodworking materials, techniques, products and the people whose livelihoods depend on working with the natural materials of their local environments. ”
JAPAN HOUSE LONDON Webサイトより引用

会場の英文を一部翻訳・要約・抜粋したものに、私の個人の意見をくわえてご紹介させていただいております。

まっすぐな線

飛騨の匠

今回のテーマは飛騨の匠と墨壺がキーとなった展示でした。

「匠」という言葉は1800年前の文書にも残され、技・熟練者・職人・つくり手・建築家と様々な意味があります。

飛騨の熟練した大工は「飛騨の匠」と呼ばれ、西暦750年代になると税のかわりにかつての都奈良に大工を派遣し寺院などの建築に携っていたのだとか。もう少しわかりやすく言うと、お米(年貢)のかわりに技術を納めていたと言うことです。今も奈良県の橿原市にはかつて飛騨の匠が暮らした飛騨町など飛騨にまつわる地名が今も残っています。

墨縄

会場では万葉集の歌が紹介されていました。

かにかくに物は思はじ飛騨人の打つ墨縄のただ一道に

訳:あれやこれやと思ったりしません。飛騨人の打つ墨縄のようにただ一筋にまっすぐあなたを思っています。

墨縄(墨壺)は大工が使うまっすぐな線を引く道具です。会場のキャプションには「飛騨の名工による墨縄の精度を讃える歌が詠まれています。」と書かれていましたがまっすぐな墨縄の線を自分の思いに喩えた一途な恋の歌のようです。

 

本展示会は墨壺(墨縄)のまっすぐな線のように飛騨の地で1800年も前から変わらず木や森と向き合う人達を紹介する展示会でした。

 

より詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。
飛騨木工連合会 飛騨の匠学会WEBサイト

ロンドンで飛騨の森を歩く

飛騨の森

展示会開催前に会場を担当したデザイナーのSPREADのお二人とカメラマンさんを森へ案内する機会がありました。登山道でも林道でもない道のない森の中を歩き、伐採中の森や伐採跡地も訪れました。

会場に入ると森がプリントされた透け感のあるカーテンが目に入ります。青々と茂り視界を遮る木々を縫うように進んだ、飛騨の森がそこにありました。

森のカーテン

オープニングの時には気づきませんでしたが会場には鳥のさえずりや木々の葉がそよぐ音がどこからか流れていました。
やわらかな曲線で配されたカーテンでゆるやかに会場が仕切られ、森の中に展示物が点在し、決められた順路はなかったと思います。(あったらごめんなさい)
透けたカーテンから隙間から向こうの気配が伝わるけれど会場全体を見渡す事はできない。私を含め鑑賞者は森を歩くような、迷い込むような感覚で会場を回っていたように思います。

飛騨のヒダヒダ

飛騨の語源は山がいくつも重なってできる「山襞/ヤマヒダ」とも言われています。SPREADの小林さん曰く「飛騨のヒダヒダ」をこのカーテンで表したのだとか。
 

飛騨のもの飛騨のこと

ロンドンの飛騨

会場には様々な展示がありました。

多様な樹種サンプル
大工道具
継手や曲木などの技法紹介
一位の笏
円空
一位一刀彫
籠渡し
めでたのオーディオ展示
飛騨地域の近代木工の商品の展示
 

展示物のほとんどが飛騨で見れるものとはいえ、デザイナーが入り展示物からキャプション、ライティングまで、意図をもって展示された空間はとても美しいものでした。

会場の最後にはボルダリングホールドCONOURE、奥井木工舎の雪入道と一緒に展示をされていました。嬉しいですね。

書いた人 松原千明
ALL PHOTO CREDIT JAPAN HOUSE LONDON