木と暮らしの制作所

ものづくりの源流を辿って

ものづくりの源流を辿って

ものづくりの源流を辿って

森や木に関わる仕事に関心のある人と、飛騨地域の事業者をつなぐ「森のバトン インターンシップ見学ツアー」。今回は、川上の林業・製材に焦点を当てて、規模や事業内容の異なる5つの企業の現場を見学させていただきました。
実施は2026年7月11日(土)・12日(日)の1泊2日です。

森のバトンとは

「森のバトン」は、「10年後も変わらず飛騨の木を使い、家具をつくり続けられるだろうか」という問いから始まりました。

家具づくりには多くの人の手が必要です。木を伐採する林業者、製材・乾燥を担う工場、刃物を研ぐ職人、塗料屋さん、機械屋さん…。多くの専門家に支えられて、はじめて家具は形になります。

しかし、こうした企業の多くはホームページを持たず、ハローワークや縁故採用に頼っているのが現状です。 そこで、インターネットや求人情報だけでは伝わらない“現場の空気”をツアーで体感してもらい、希望者には後日インターンシップへつながる機会を提供しています。 ※就職のあっせんは行いません。
企画・運営は、高山市で地域産材広葉樹の家具を制作する「株式会社木と暮らしの制作所」と、飛騨地域で広葉樹の価値循環に取り組む「株式会社飛騨の森でクマは踊る」。 両社で始めた「森のバトン インターンシップ見学ツアー」は、現在高山市が主催となり開催しています。

訪問先

飛騨高山森林組合
丸弘木材合資会社
有限会社山下木材
有限会社坂本製材所
笠原木材株式会社
民宿 甚左衛門

※訪問順 

1日目|2026年7月11日(土)

13:00 高山駅 出発

ツアー初日は、高山駅白山口(西口)に集合し、バスで最初の訪問先である飛騨高山森林組合の伐採現場へ向かいました。
バスには、岐阜県地域森林管理市である飛騨高山森林組合の柴田さん・八賀さんにも同乗していただき、現場についての事前説明などをしていただきました。

13:50〜14:40 飛騨高山森林組合/伐採現場(川上)

ツアー最初の訪問先は、荘川町にある飛騨高山森林組合の伐採現場です。
今回見学したのは、FSC認証*を取得した森。
FSC認証を取得している森林は全国的にもまだ数パーセントしかないそうで、飛騨高山森林組合でもこの現場のみとのことでした。
※FSC認証:環境・社会・経済に配慮した責任ある森林管理が行われているかを、10の原則と70の基準に基づいて審査・認証する国際的な森林認証制度 

車内から引き続き、柴田さん・八賀さんより、植林から伐採までの林業の流れや、この現場で行われている施業についてご説明いただきました。

*台風の被害で根本からひっくりかえってしまった木

*倒木を伐採した際に根本が立ち上がり、高い位置で伐ったように見える切り株

今回訪れた現場では、平成30年度の台風により多くの被害を受けていました。この場所では現在、被害を受けた場所から皆伐*を行っているそうです。
皆伐を行う目的としては、倒れた木や不安定な木をそのままにすることで起こる二次災害を防ぐこと。そして、被害を受けた森林を整理し、健全な森をできるだけ早く再生させることだそうです。
※皆伐:一定の区画にある樹木を一度にすべて伐採する施業方法

*植えたばかりの稚樹。植えてから2年ほどで背丈くらいの高さに育つそうです。

伐採した後の土地には、新たに苗木を植え、次の森林を育てていきます。
一般的には1ヘクタールあたり約3,000本の苗木を植えることが多いそうですが、今回の現場では約2,000本を植える低密度植栽が行われています。
植える本数を少なくすることで、成長に合わせて木を間引く間伐の回数や手間を減らすことができ、将来的な森林管理にかかる負担を抑えることにつながるそうです。

*伐採されたカラマツの原木

一方で、伐採木の収入だけでは苗木を植え、育てていくことも難しいという、再造林の厳しい現実についてもお話しいただきました。
今回の現場で伐採される多くの木は、台風による被害を受けているため、利用できる用途が限られ、ほとんどがパルプやチップ用材*として搬出されるとのことでした。
※伐採された丸太(原木)には、太さや曲がり、節など品質に応じてA~Cの等級が割り当てられます。A材=建築用材 B材=合板・集成材用材 C材=パルプ・チップ用材 等級が上がるほど高価値で取引されます。

下刈りや植栽など、森林を育てるためには多くの費用がかかります。しかし、今回のようにパルプやチップ用材が中心となる場合は、木材の販売による収入だけでは森林を再生していくことは簡単ではありません。今回の現場では、補助金を活用することで再造林が成り立っているというお話を伺いました。

*広葉樹を残すことで、災害や病気に強い森になるそうです。また、広葉樹の落ち葉が稚樹の栄養となるほか、多様な虫や動物が集まる場所となり、生物多様性の向上にもつながります。

また、FSC認証を取得している森林では、経済性だけを優先した森林管理はできません。
例えば、シカなどの害獣による被害を防ぐための対策にも、使用できる化学薬品に制限があります。森林の生物多様性を守るため、施業の際には広葉樹を残すなど、森の環境にも配慮した管理が求められます。

今回の見学では、林業が木材を生産するだけではなく、災害の防止や水源の保全など、私たちの暮らしを守る役割も担っていることについて理解を深めることができました。また、これまであまり知る機会のなかったFSC認証についても、実際にその現場を見学することで、その仕組みを知るきっかけとなりました。

15:20〜15:50 飛騨高山森林組合/土場・製材

引き続き、柴田さん・八賀さんにご案内いただき、飛騨高山森林組合の土場と製材所を見学しました。
飛騨高山森林組合の土場と製材所は、「木の里団地」と呼ばれる木材関係の企業が集まる工業団地にあります。

まず訪れた土場では、伐採された原木がどのように仕分けされ、市場へ流通していくのかについてご説明いただきました。

原木は等級によって流通経路が異なるそうで、A材はこの土場に集められますが、B材・C材は直送材と呼ばれ、伐採現場からそれぞれの卸先へ直接運ばれているそうです。
飛騨高山森林組合で取り扱っている木材は多くがスギで、ヒノキは一部とのことでした。広葉樹ではナラやクリも取り扱われていますが、こちらは薪用として販売されているそうです。

*木口に書かれた数字が丸太の直径で、丸太の直径は加工したときにその太さがきちんと使えるように末口(木の先端側)で測ります。

また、針葉樹では中目材と呼ばれる直径14㎝〜32㎝の丸太に建築用材としての需要があり、そのなかでも直径24㎝〜28㎝のものが特に需要のある太さだそうです。

その後、土場に隣接する製材工場を見学し、建築用材がつくられる工程についてご説明いただきました。
時間の都合上一部のみの見学となりましたが、製材の流れに沿ってご案内いただきました。

加工の流れは、大まかに樹皮剥ぎ→製材→乾燥→仕上げ→検品で、工場内は原木の搬入口から搬出口まで加工工程の流れに合わせてそれぞれの加工所が配置されていました。

まず最初に樹皮剥ぎの行程です。
ここでは、リングバーカーと呼ばれる機械を使っているそうで、樹皮を剥きながら原木の元と末(根本側と先端側)をセンサーで判別して、決まった向きで送り出していくそうです。

続いて見学したのは、ノーマンツイン帯鋸盤と呼ばれる製材機です。こちらもセンサーによって原木の形状からカット位置を自動で判断し、2枚の帯鋸で一度に丸太の2面を製材することができる大型の製材機でした。

大規模な製材所であることから、製材の工程では効率を重視した設備が導入されていることがわかります。

*乾燥待ちの桟積みされた柱

最後に乾燥機を見学しました。工場には3種類の乾燥機があり、角材や板など、製品に合わせて使い分けているとのことでした。製材された木材は、およそ1〜2週間かけて乾燥させます。

今回の見学では、伐採された原木が土場で仕分けされ、製材・乾燥・加工を経て建築用材として出荷されるまで、一連の流れを知ることができました。山の管理や伐採だけでなく、原木の販売や製材、製品の加工・流通までを一貫して手掛ける飛騨高山森林組合の取り組みから、林業の6次産業化についても理解を深める機会となりました。

16:00〜16:30 丸弘木材合資会社

続いて訪れたのは、飛騨高山森林組合と同じ木の里団地で、建築用材の製材を専門に行っている丸弘木材です。

代表の中畑さんにご案内いただきました。

*実際に製材を見せていただきました

丸弘木材は、祖父の代から続く製材所で、中畑さんで3代目。祖父の代に製材を始めた当初は広葉樹を中心に挽いていましたが、住宅需要の変化に合わせて、父の代には針葉樹を専門に製材と小売を行うようになったそうです。その後、15年ほど前に事業を小売に絞ろうとしていたところに中畑さんが加わり、製材を引き継いで現在に至ります。

*いろいろな規格の板。一枚一枚幅や長さが違いますが丁寧に管理されています。

中大規模の製材所とは価格で勝負することが難しいため、丸弘木材では均一な製品を大量につくるのではなく、ひとつひとつの製品の価値を高めるような製材を行っています。

製材は、実際に挽いてみるまで丸太の中が見えないため、どのように挽けばよいか判断するのが難しいそうです。それでも、「いい丸太はいいものにしたい」という思いから、丸太の状態を見ながら、その木に合わせた製材を行っています。また、毎年挽くものを変えているそうで、「楽しいから」と話す中畑さんからは、木を挽くことそのものへの楽しさやこだわりが伝わってきました。

工場には5mの丸太を挽くことができる大きな製材機があり、建築の梁などに使われる材も製材しています。しかし、現在では、こうした梁は建物の見えないところに使われることが多く、需要はそれほど多くないそうです。それでも、昔ながらの木を活かした建築を残していきたいという想いをお話していただきました。

最後に製材所に併設された乾燥機も見学させていただきました。
中畑さんによると、木材の乾燥は理想をいえば天然乾燥だそうですが、天然乾燥には広い場所が必要になるほか、虫食いや腐りなどの管理上のリスクや手間もあるため、現在は人工乾燥を取り入れているとのことでした。
人工乾燥では、木の油をできるだけ抜きたくないという考えから、可能な限り低い温度で乾燥させているそうです。

直前に見学した飛騨高山森林組合の製材所とは、規模や設備、製材の方法にも違いがあり、それぞれの製材所の特徴やどのような考え方で仕事をしているのかを知ることができました。2か所の製材所を続けて見学したことで、製材業にもさまざまな形があることを学ぶ機会となりました。 
 

17:30〜18:30 民宿甚左衛門/飛騨高山森林組合OBトーク

*中央の3人がOBの方々。船越さん(左)橋本さん(中)柴田さん(右)

飛騨高山森林組合のOBで、現在は高山市内でそれぞれ独立して活動されているTHINK greenの橋本さん、ふなりんの船越さん、リトルバードの柴田さんをお招きし、森林組合時代の仕事や現在の活動についてお話を伺いました。
3人が林業の仕事を始めたきっかけは、それぞれ異なります。高山市出身の橋本さんはスノーボードが趣味で、季節的な働き方ができる仕事を探して林業の道へ。京都出身の船越さんはスキーをするために高山へ移り、橋本さんと同じく季節的な労働ができることから林業を始めたそうです。大阪出身の柴田さんは、魚釣りをしたくて高山に来たところ、森林組合の求人を見つけたことがきっかけでした。

3人とも、もともと林業という仕事を目指していたわけではなく、それぞれの暮らしや興味をきっかけに林業の仕事と出会ったそうです。そこから森林組合で仕事を続けるなかで、山で働くことに面白さや、やりがいを感じるようになったとお話しいただきました。

一方で、林業は危険と隣り合わせの仕事でもあります。3人それぞれから、山の中で木を伐ることは「命がけ」であるという話も伺いました。
「絶対はない」自然を相手にする仕事だからこそ、人間の思い通りにはならないことも多く、山に対して常にリスペクトを持ちながら仕事をしていると話す姿が印象に残りました。

*参加者からの質疑も交えながら緩やかな形で開催しました。

それぞれ異なるきっかけで林業と出会い、仕事を続けるなかでやりがいや自然への向き合い方を見つけ、現在はそれぞれの道で活動されている。3人のこれまでの経験や言葉から、林業という仕事について考える時間となりました。

18:30〜20:00 民宿甚左衛門/交流会

飛騨の食材をふんだんに使った料理を囲みながら交流会を行いました。
1日の学びを振り返りながら、それぞれの興味や仕事について話を交わし、参加者同士の交流を深める時間となりました。 

19:30〜20:00 民宿甚左衛門/就業相談会

交流会と並行して、森のジョブステーションぎふの藤掛さんをお招きし、林業就業相談会を実施しました。スライドトーク形式で、高山市の森の特徴や、改めて「林業」という仕事についてお話をしていただきました。

高山市の森の大きな魅力として紹介されたのが、標高差です。
標高500mほどの地域から3000m級の山々まで大きな高低差があり、それだけ多様な森林や自然環境があります。林業の仕事を通してさまざまな森に関われるだけでなく、暮らしの中でも多様な自然に触れられることは、高山市ならではの魅力のひとつだと感じました。

続いて、林業が担っている役割についてもお話しいただきました。
林業は木材を生産するだけではなく、生物多様性の保全、土砂災害の防止、水源のかん養、保健休養の場の提供など、私たちの暮らしを守るさまざまな役割を担っています。
補助金で成り立っていると言われることもありますが、それだけ国が費用をかけて守る必要があるほど、私たちの暮らしにとって大切な産業であるという言葉も印象に残りました。

さらに、木そのものの魅力についても、「水と太陽だけで育ち、建築の構造材になるのは木だけ」「伐っても植えて育てれば、また使うことができる」という話がありました。
木は、伐って利用して終わりではなく、植えて育てることで次の世代へつないでいくことができます。一方で、林業の担い手が少なくなっている今、伐り時を迎えた木を利用し、その跡地に新しい木を植えていかなければ、60年、80年後に使える木がなくなってしまいます。
今ある森を活かしながら、次の森を育てていく。そうした長い時間の循環を担い、今の暮らしと次の世代の暮らしをつないでいくことも、林業という仕事の大切な役割だと感じました。 

林業の仕事としてのやりがいだけではなく、森や木が私たちの暮らしとどのようにつながっているのかという視点からお話しいただいたことで、県外から参加した人にとっても、高山市の森や林業を知り、そこで働くことを考えるきっかけとなりました。

2日目|2026年7月12日(日)

8:20 民宿甚左衛門 出発

8:30〜9:10 有限会社山下木材

2日目最初の訪問先は、林業と炭の生産を行っている有限会社山下木材です。
ご案内していただいたのは代表の山下さん。
最初に会社の取り組みをまとめた映像を見せて頂きながらお話していただきました。

有限会社へ組織変更してから今年でちょうど50周年を迎え、組織変更前から数えると創業120年になるそうです。曾祖父の代には樺太開発で林業を行っていたなど、創業当初は林業を専門にしていましたが、30年ほど前に炭の事業を始められて、現在は林業と炭の生産を軸に事業をされています。

山下さんによると、森林組合からの受注もされているらしく、1日目に見学した荘川のFSCの森にも関わっていらっしゃるそうです。

山下木材では、平成5年頃からおが粉の生産を始め、針葉樹のおが粉は牛舎の寝床に、広葉樹のおが粉はきのこの菌床用として販売していました。
バイオマス普及とともに原木の価格が上昇したのをきっかけに平成9年から炭の生産を始められました。
また、この頃から間伐材が流通するようになり、間伐材利用の補助金を活用してこちらの工場を整備したとのことです。

*原料となる製材端材

植林した木は、伐採までの過程でおよそ4割を間伐する必要があります。炭の生産を始めた当初はこの間伐材を原料に炭を作っていましたが、現在ではコスト面から製材時に出る端材を使う割合が多くなっているとのことでした。製材端材は山下さんが伐採した木を製材所で製材し、その製材端材を買い戻す形で循環ができているというお話をしていただきました。

*山下さんの後ろにある筒が炭を作る炉です。

工場では、セラミック炭の製造工程をみせていただきました。
間伐材や製材端材をまずチッパー機でチップ状に加工します。
その後、チップとセラミックパウダーを混ぜ、コーティングされたチップを自燃式炭化炉と呼ばれる炉に入れて炭化させることで、セラミック炭をつくっているそうです。

*床下調湿材として梱包されたもの

*中に詰まっているセラミック炭

できあがった炭は、粒の大きさによって用途を変えています。
大きな粒は土壌改良用や建築物の床下に敷く調湿材として、中くらいの粒は靴などの除湿・調湿用として使用されます。さらに小さな粒は細かく粉砕し、ごみ焼却炉などのフィルター用として利用されているそうです。

山から伐り出された木は、さまざまな形に姿を変えながら地域の中で活用されています。川上から始まる事業者同士のつながりによって生まれる木の循環と、そこから広がるさまざまな活用のかたちを知ることができました。 

9:20〜10:00 有限会社坂本製材所

続いて訪れたのは、今年で創業99年を迎える坂本製材所です。
 今回お話をしていただいたのは、会長の坂本さんと、従業員であり娘の春口麻衣さんです。

坂本製材所は、創業当初は林業を行っていましたが、徐々に製材業へと事業を広げ、現在は製材を専門にされています。針葉樹を中心に建築用材を製材するほか、お客さんから持ち込まれた丸太を挽く「賃挽き」も行っています。

坂本さんは、製材をはじめてこの道40年。現在は、勉強中だという春口さんとともに製材をされています。
 丸太は一本ずつ状態が異なるため、木をよく見ながら製材することで、丸太の価値をできるだけ高めたいと春口さんからお話をしていただきました。

*製材を見せていただきました。奥さんと作業をされています。

大工さんなどから「こういう曲がりの梁がほしい」といった細かな相談を受けることもあるそうです。そうした相談を受けた時には、山下木材さんに連絡して、条件に合う曲がった木を仕入れることもあるとのことでした。曲がっている木は、そのままだとチップ用材になってしまうため、そういった形で仕入れているとのことです。
また、坂本製材所で出た製材端材も山下木材が買い取りをされているとお話していただきました。

坂本製材所では、「ヒメコマツ」という、飛騨で古くから使われてきた木の製材を得意としています。ヒメコマツは、かつて飛騨の建築によく使われていた木だそうです。
江戸時代、飛騨が幕府領だった頃には、木曽五木*の伐採が制限されていました。そこで、ヒノキに似た木肌のヒメコマツが使われたとのことです。
 ※木曽五木:江戸時代に伐採が制限されたヒノキ、サワラ、アスナロ、クロベ、コウヤマキの5種類の木

*ヒメコマツやアカマツなど色々な木を使った応接室を見せていただきました。ヒメコマツはアカマツに比べて割れが穏やかで白くて艶があるそうです。

しかし、昔から使われてきた木であっても、現在の建築では使うことが難しくなっているものがあります。建築基準法の改正により、木材の強度などに関するデータがないものは建築用材として使うことが難しくなったためです。そのような影響で、飛騨で古くから使われてきたヒメコマツやサワラなども、現在ではほとんど使われなくなってしまったそうです。

それでも、飛騨で昔から使われてきた木を使う文化を残していきたいという思いから、坂本製材所では今もヒメコマツの製材を続けています。

敷地内に置かれた乾燥中の材料は、注文に合わせた製材ができるようにあらかじめ少し大きめの寸法で製材して在庫しておき、注文が入ると必要な寸法に合わせて改めて挽き直すそうです。

山で伐られた木をつくり手へつなぎ、木を挽くことを通して、地域で育まれてきた木の文化を次の世代へつないでいる。木そのものだけでなく、そこにある文化やつながりまで残していく、そんな姿が印象に残りました。 

10:10〜11:00 笠原木材株式会社

最後の訪問先は、林業から建築、チップの生産などの木材リサイクル業まで、幅広い事業を手掛ける笠原木材です。
 今回は、リサイクル事業部の桂川さんと住宅事業部の糸久さんにご案内いただき、リサイクル事業と住宅事業を中心にお話を伺いました。

まずは、桂川さんにリサイクル事業の工場をご案内いただきました。
笠原木材でチップの原料としているのは、一般的にC材と呼ばれる木材のほか、枝や根などのD材、建築物の解体時に出る産廃材などです。これらの原料や用途に合わせて、さまざまな仕様のチップを作り分けているとのことでした。

*奥に見える円筒状の機械がバーカー

最初に見学したのは、製紙用のチップをつくる工場です。
製紙用のチップは樹皮がついていると使えないため、まずバーカーと呼ばれる機械で丸太の樹皮を取り除きます。
その後、チッパーと呼ばれる機械で木材を細かく砕き、さらにふるいにかけることで、均一な大きさのチップにしていきます。

*D材や建築廃材用のチッパー。製紙用チップは刃物で切削するのに対してこちらは、粉砕してチップを作るそうです。廃材についた金属なども磁石で取り除けるそう。

チップも用途によってさまざまな仕様があり、用途に合わせてそれぞれの材料と3種類のチッパーを使い分けてチップを製造しています。
製紙用チップは樹皮を剥いでサイズも均一なもので、発電燃料用チップは樹皮はそのままで形も不揃い、ボイラー燃料用は乾燥をさせているなど用途に合わせて加工をされています。

*ボイラー用の破砕チップ 砕いているので、粒が大きい。

*発電燃料用の切削チップ 樹皮がついているので、もじゃもじゃした繊維が見える。

また、チップの原料は主に針葉樹で、根や枝、建築廃材などは、主に燃料用のチップなどとして利用されるとのことでした。

*左奥が廃材で、右奥が枝や根っこの山

笠原木材では、建築廃材などの産業廃棄物を受け入れ、原料として再利用するリサイクル事業も行っています。この事業は岐阜県からの委託を受けており、地域で発生する木材や産業廃棄物を受け入れる役割も担っています。

一方で、無垢材などは再びチップなどに加工することができますが、合板や集成材などは接着剤の影響でリサイクルが難しいというお話も伺いました。

続いて、住宅事業部の糸久さんに「かさはらの家」のショールームをご案内いただきました。

かさはらの家で使用している木材は、すべて高山市産の木材で、構造材は職人が一本一本手刻みで加工しているそうです。
また、新築住宅だけでなく、既存住宅の改修も行っており、現在では新築よりも改修の仕事のほうが多くなっているとのことでした。

山林、住宅、リサイクルという3つの事業を通して、一本の木をできるだけ余すことなく使っていく、循環型の取り組みが印象に残りました。

11:00〜12:00 笠原木材株式会社/ふりかえり

最後に笠原木材のショールームをお借りして、2日間の振り返りを行いました。
参加者それぞれが、印象に残った出来事や学びを共有しました。

6月に実施したAコースにも参加していただいた方も数名いたりと参加者の熱意にも触れた2日間となりました。

12:30 高山駅 解散

2日間のツアーを終え、高山駅にて解散しました。

おわりに

昨年度に引き続き、2回目となる針葉樹をテーマにした森のバトン。今回は、林業と製材をテーマに、規模や事業内容、取り組みの異なる事業者の皆さんと、その現場を巡りました。

今回のツアーを振り返ると、私たちが森のバトンで大切にしたいと考えているつながりを、参加者の方々にもさまざまな場面で感じてもらえることができたかと思います。
それぞれの事業者が個として仕事をしているのではなく、1本の丸太が形を変えながら次の人、次の人と手渡されていく。その関わり合いの中でこの地域の営みは成り立っています。

また、そうしたつながりが、この地域の中で生まれ、続いていることも、森と木の仕事のおもしろさであり、大きな魅力なのではないかと思います。小さな地域の中に、これだけ多様な仕事や人が関わり合う関係があることも、飛騨地域ならではの魅力だと感じています。

今回のツアーを通して、参加者の皆さまにとっても新たな気づきや学びがあり、この地域や森林・木材に関わる仕事に興味を持つきっかけになれば嬉しく思います。
そして、飛騨の森や木に関わる人たちの輪を知り、ちょっと面白そうと思ってもらえたなら、私たちにとっても嬉しいです。
今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

書いた人/木と暮らしの制作所 迫間涼雅